そのサイト、PVを「集客」の目標にしていて大丈夫ですか?

「検索順位」「訪問数」「滞在時間」「直帰率」、そして「PV(ページビュー)」。Webマーケティングにおいて、ウォッチすべき数値や指標は数多くあります。その中でも、よく指標、目標値に使われるのがPV。実際のWebサイト運用においても、月間のPV数を目標にする例が多いようです。ただし、サイトの目的によってはPVを目標値にするのが適切でないケースも少なくありません。

集客の指標になりがちな「ページ閲覧数」

Webサイトの規模やパフォーマンス、閲覧状況を判断するために、サイト分析、特に集客の指標になることの多い「PV(ページビュー)」。PV数とは何かを、端的に説明すれば、「サイト内で閲覧されたページ数」です。

一般社団法人ウェブ解析士協会発行の『ウェブ解析士2018 認定試験公式テキスト』(154ページ)の表現を借りて、より正確に表現すると、「ページのHTMLファイルに埋め込まれた計測タグ(トラッキングコード)がブラウザーに読み込まれることによって計測サーバーへデータが送られた数」になります。

Webサイトの解析をする際、このPVと似た数値がいくつかあります。正しくサイトのパフォーマンスや利用実態を把握するには、それぞれの数値の違いや計測の仕方を理解しておく必要があるでしょう。


PVと似た数値の「ユーザー数」「セッション数」

まずは「ユーザー数」ですが、文字通りサイトに訪問したユーザーの数です。次に、Google アナリティクスなどの分析ツールで、必ずといっていいほど登場するのが「セッション数」でしょうか。セッションとは、ユーザーがサイトに訪問してから離れるまでの一連の行動を指します。

セッション=訪問

あるユーザーがサイトに流入して、様々なページを閲覧したうえで、離脱したとします。この「流入→閲覧→離脱」という動きを、1つのまとまりとして数えるのがセッション。「訪問数」という場合もあります。つまり、ユーザー数が「行動した人の数」で、セッションが「行動自体の数」とも言えるでしょう。

PV、ユーザー数、セッション数の違いを理解しておくことは大切です。例えば、あるユーザーがサイトに訪れ、合計3ページ見た後にサイトから離脱。しばらく経ってから再びサイトに訪問して、合計2ページ見た後にサイトから離脱したとします。

この場合、ユーザー数は1、PVは5、セッション数は2です。訪問した人の数は1人ですからユーザー数は1。閲覧されたページの総数は5ページなのでPVは5。流入から離脱の一連の行動が2回あるので、セッション数は2となります。


PVには指標として二面性がある?

ここまで、PVなど数値の定義や数え方について説明してきました。それでは、PVはどんな場面で利用すべきなのかに話しを移しましょう。まず、Webマーケティングに関わる方に意識してもらいたいのは、「PVは集客だけではなく、回遊性を表す指標でもある」という点です。

まずは、「回遊性」というやや聞き慣れない言葉を解説します。回遊性とは、サイト内の行動しやすさの度合いのこと。ユーザーが1回の訪問で、どれくらいのページを閲覧したか、どれぐらいの時間サイトに滞在したかなどから判断します。

もともと「回遊」は、都市や店舗などの空間設計で使われていた言葉です。デパートに来店した顧客にできるだけ多くのフロアを見てもらったり、来店した顧客に商品をたくさん見てもらうことを、「お客さんに回遊してもらう」と表現します。

PVが回遊性の指標だということは、セッション数と合わせて比較すると理解しやすくなります。例えば、1万PVでも「セッション数=5,000」と「セッション数=2,000」では、ユーザーの行動の中身が大きく異なります。

前者は1セッションに対して平均2ページ閲覧されているのに対し、後者は1セッションで平均5ページ閲覧されているわけです。前者より後者の方が、1回の訪問でたくさんのページが見られているので、回遊性が高いと判断できるでしょう。

とは言え、サイト集客の指標として、PVを設定する企業は少なくありません。しかし、これまで見てきたように、PVは回遊性を表す指標でもあります。集客という点に着目してサイト分析をする場合、PVだけでなく他にもチェックすべき指標があるのです。


PVが集客指標に向くサイトと向かないサイト

繰り返しになりますが、PVは集客だけでなく回遊性も表しているので、集客の目標とした場合、指標として適切でないケースがあります。そして、集客の目標として見るべき指標はサイトの種類や目的によってそれぞれなのです。

例えば、BtoB企業のWebサイトでは、集客の指標はセッション数が適切でしょう。BtoB企業は、リードジェネレーション(見込み顧客の獲得)を目的としてサイトを運営することがほとんどです。

集客状況の評価としては、「どれくらいの見込み顧客がサイトに訪問したか」という訪問(セッション)数が軸になるため、集客の指標はセッション数で、PVは回遊性の指標として利用すべきでしょう。

逆に、Web媒体などのメディアサイトでは、PVを集客の指標とするのが一般的です。特に広告掲載でマネタイズしているWebサイトであれば、PV数が増えると、それに比例して広告の露出量も増加するため、PVがサイトのパフォーマンスを示すことになります。

ただ、メディアサイトと言っても、指標も一概には決められません。サイトの認知度向上を目指す場合は「リピーター数」を重視することもありますし、会員登録型のサイトは、「ユーザー数」を集客の指標として置くこともあるでしょう。


指標が不適切だと集客成功と誤解するケースも

PVという言葉は、Webマーケティングに関わっていない人たちにも浸透しています。誰もが知る、お馴染みの指標、数値だからと、Webサイトの目的や目標があいまいなまま、とにかくPVだけをチェックして、自社の状態を理解したつもりになるのは危険です。

実際に回遊性が向上して、PV数が増えたにも関わらず、集客に成功したと勘違いしてしまうケースも少なくありません。Webサイト内の導線整備、UI(ユーザーインターフェース)改善などによって回遊性が向上した場合、セッション数や訪問数は横ばいでも、PV数だけ上昇します。もし集客目標の指標としてPVを見ていると、回遊性の高まりに気づかず、「集客力がアップした」などと誤った評価をする可能性があります。

Webサイトを分析する際、見るべき数値として必ずPVはついて回るでしょう。ですが、「他のサイトよりPV数が多いから」「前年や前月と比べてPV数が増えているから」といった理由だけで、自社サイトの目的が達成できているとは考えないでください。当たり前な結論ですが、Webサイトの目的に合わせて、集客の指標を設定しなければならないのです。


<著者プロフィール>

矢野 嵩之

矢野 嵩之(やの たかゆき)
2016年4月入社、美容系Webメディアのライター・編集者としてコンテンツ作成に携わる。その後、新規事業のWebマーケティング担当、オウンドメディア運営担当を経て、現在はBtoB企業サイトのWebコンサルタント業務に従事する。