サイト改善 最初の一歩は「目標設定」から

BtoB企業でマーケテイング業務に携わっている皆さま。自社サイトの分析・改善は滞りなく実施できていますか? 展示会やセミナーといったオフライン施策との兼務のため、サイトと向き合う時間がなかなか取れないという方も多いのではないでしょうか。

シリーズ連載『継続こそ力なり!ミニマムに始めるBtoBサイト改善術』では、日々の業務で忙しい皆さまでも、わすかなスキマ時間でサイトを分析・改善するためのノウハウやテクニックを紹介していきます。継続的にPDCAを回すことでサイト改善のコツが身に付き、長期的には大きなビジネス成果につながっていくでしょう。

第一弾となる今回は、PDCAを回していく上で欠かせない「目標設定」について紹介。非常に重要な工程であるものの、なかなか目標を決められず、時間と労力を使い果たしてしまった。サイト改善の取り組み自体を断念してしまったという声もよく聞きます。そこで、今回ご紹介する「目標設定」はすぐに実行に移せるよう、とてもシンプルな内容としています。皆様がサイト改善のPDCAを回すきっかけとなれば幸いです。

本格的な目標設定は意外と大変。まずは簡易的な目標値で進めましょう

法人をターゲットするBtoBサイトと一口に言っても、その運用目的はさまざまです。ブランディングやIR、なかには代理店向けの情報提供を目的としたサイトもあります。今回は、BtoBサイトでもっとも多いと思われる「リードジェネレーション(見込み顧客の獲得)」を目的とした場合の目標設定の考え方を紹介します。

通常、リードジェネレーションの計画立案には以下のような計算式を用いて要素分解し、逆算によって緻密に目標を設定していく必要があります。

〔売上=客単価x受注率x商談率xコンバージョン率xセッション数〕

当然、このように緻密な目標設定を行うことが望ましいですが、受注率や商談率はセールスチームに確認する必要があったり、妥当性のあるコンバージョン率やセッション数をシミュレーションするには比較となるデータを算出したりと、想像以上に時間がかかってしまいます。

また、サイト改善の取り組みに慣れないうちから、あまり多くの指標を追いかけてしまうと、定常的なチェックも大変ですし、逆に課題の本質がみえにくくなってしまう危険があります。

そこでおすすめしたいのが、当初はコンバージョン率のみを目標としてサイト改善の取り組みを始めることです。そして、その際に目標とするコンバージョン率は「1%」を推奨します。この「1%」とという目標値の根拠は、10年間に渡りBtoB企業のサイトコンサルティングを行ってきた、弊社の統計データをベースにしています。

当然、業界や競合性、コンバージョン種別によって、その率は大きく変動しますが、BtoB領域に属するプロダクトかつ、明確なコンバージョン率の目標が決められないという状況であれば、まずはこの1%をベンチマークに、取り組みを始めてみてはいかがでしょう。妥当性はいったん置いておいて、まずはPDCAを回してみることがサイト改善の大きな一歩となります。

なお、現時点で1%を定常的に超えているサイトであれば、コンバージョン率1%をキープしつつ、広告などによって訪問数を増加させていくことが当面の目標となるでしょう。


サブ指標「直帰率」「フォーム到達率」「フォーム完了率」からボトルネック要素を探す

さて、当面はコンバージョン率を唯一の目標とすることをお薦めしましたが、日々漫然とコンバージョン率の推移を眺めていても、改善(コンバージョン率向上)のヒントはみつかりません。そこで、コンバージョンに深く関わりのある「直帰率」「フォーム到達率」「フォーム完了率」の3つの指標に注目して、サイトの抱えるボトルネック要素を見つけやすくします。よって、サイト改善の取り組みにおいて定常的に追いかけていく数値は、「コンバージョン率」「直帰率」「フォーム到達率」「フォーム完了率」の計4つになります。


「直帰率」は必ずページ単位に分解して課題を調査する

「直帰」とは、ユーザーがサイトを訪れた際に、最初の1ページだけみてそのままサイトから離脱する行動を指します。そして、「1ページのみを見て、サイトから離脱する行動の割合」が「直帰率」となります。企業のサービスサイトなどの場合、コンバージョン完了まで数ページ経由することが多いため、入り口となるページの直帰率は極力低い状態が望まれます。直帰率をチェックする際は、サイト全体の平均直帰率ではなく、必ずページ単位の直帰率を把握するようにしましょう。その際に、「加重並べ替え」でソートすると、訪問数を考慮、いわば改善すべきページ順に自動で並び替えてくれます。非常に便利な機能なので、ぜひお試しください。

なお、直帰率の目安ですが、ビジネス系コンテンツ(TOPページや商品紹介ページ)では、概ね60%以内をベンチマークとしたいところです。


「フォーム到達率」でコンバージョンプロセスの課題を調査する

フォーム到達率とは、Webサイトを訪問した閲覧者のうち、コンバージョンとして設定した「問い合わせ」や「資料ダウンロード」などの各種入力フォームへ到達した閲覧者の割合です。フォーム到達率が悪いということは、各ページからフォームへの導線がわかりづらい、見つかりにくいという可能性があります。

このフォーム到達率という指標を置くことによって、フォームまでの回遊プロセス、フォームのUI、どちらに問題が潜んでいるかが特定しやすくなります。(もちろん、両方に問題があるケースも多々あります。)

取り扱う商品や業種によってばらつきは大きいですが、弊社のBtoBクライアントの中には、フォーム到達率が20%を超える事例は多くあります。なお、より細かい指標として、「回遊離脱率」という指標があります。これは、直帰はしなかった(回遊した)が、フォームに至らなかった率を示します。


「フォーム完了率」で入力フォームが抱える課題を調査する

フォーム完了率とは、入力フォームまで到達した閲覧者のうち、最終的にフォーム送信が完了した割合です。フォーム完了率が悪いということは、フォームの入力項目が多すぎたり、信頼性に欠けるデザインであったりなど、心理的ハードルやユーザビリティ上の課題が生じている可能性があります。企業によっては、レギュレーション上、調整が難しい場合もありますが、ここにコンバージョンプロセス上のボトルネックを抱えるBtoBサイトは多いといえます。

流入分母の多いサイトでは、このフォーム完了率が数ポイント改善されただけで、コンバージョン総数が2桁以上増加したという事例も多く記録されています。ECサイトでは完了率が40%といったデータもありますが、BtoBにおいては、弊社の統計データを見る限りフォーム完了率17~20%ほどのサイトが多いという認識です。


目標の妥当性よりも、とにかくPDCAを回してみることが重要

繰り返しになりますが、目標を設定しなければ改善のPDCAは回せません。ただし、その目標設定に頭を悩ませて前に進めないのは本末転倒です。日々のリソースを圧迫しないよう、まずはお仕着せの目標値・サブ指標を基にPDCAを回し、サイト改善の一連の流れをご自身で体感してみてはいかがでしょう。

シリーズ連載『継続こそ力なり!ミニマムに始めるBtoBサイト改善術』。次回は、本稿で紹介した各指標をGoogleアナリティクスで取得する方法を解説します。


<著者プロフィール>
滝沢 哲平(たきざわ てっぺい)
2014年2月入社。 前職で法人向け(BtoB)のWebサイトを構築・成長させてきた経験を活かし、BtoBクライアントのWebサイト改善・運用コンサルティングに従事。 アクセス解析による定量的な分析と、経験則に基づいたヒューリスティック分析の両輪で、数多くのBtoBクライアントのビジネス成果向上(リード獲得)にコミット。