BtoB企業で記者会見をやってみたい方に。イノーバの事業戦略発表会に学ぶ

数あるマーケティング手法の中でも、高い認知拡大効果を見込めるのが記者会見です。プレスを集客し記事にしてもらえれば、絶好のPRの場となります。
しかし多くのマーケッターにとって記者会見は、高難易度なマーケティング手法。特にBtoB企業ではBtoC企業と違いターゲットが限定的になるため「プレスが集まってくれるのか」という不安はつきものです。

そこで今回、コンテンツマーケティング支援サービスを提供する株式会社イノーバの記者会見(2015年9月16日開催)に参加。当日の様子を報告するとともに、記者会見という手法を選んだ理由や準備の仕方についてコメントをもらってきました。

※この記事は旧ブログ「INBOUND marketing blog」から移行したものです。

【目次】


提供ツールの新機能と今後の事業戦略の発表を目的とした記者会見

まず前提として、イノーバの事業の説明と記者会見の内容を報告します。

同社が提供するサービスは、コンテンツマーケティングの支援です。
コンテンツマーケティングはターゲットに対して自社のサイトからお役立ち記事やホワイトペーパなどのコンテンツを提供し、認知とリード(見込み顧客)の獲得を目的として実施します。
同社はこのコンテンツマーケティングを、コンサルティングと記事作成、一連の活動を円滑にするツール「Cloud CMO」の提供を通して支援しています。

今回の記者会見は二つの発表と質疑応答で構成されています。発表時はスライドを交えて説明があり、いわゆるセミナーのような流れでした。
まず第一部では、代表取締役社長の宗像氏が、コンテンツマーケティングの支援をしている背景を説明。日本企業のマーケティングへの投資の少なさを指摘し、特に中小企業のマーケティングへの取り組みの必要性を訴えました。

株式会社イノーバ 代表取締役社長・宗像 淳 氏。中小企業を元気にしたいと熱く語る

宗像氏は「これまで多くの日本企業は既存顧客との取引が中心だったため、販売・マーケティングに力を入れていませんでした。これからはコンテンツをグローバルに発信して、新しいマーケットの開拓が必要です」と説明。そのために大切なマーケティング施策がコンテンツマーケティングであり、そこで必要となるコンテンツ記事の作成を、同社が提携するライター1500名で構成する新サービス「Content Studio」で提供すると発表しました。

Contents Studioは、企業がコンテンツマーケティングで苦労するコンテンツ作成を、イノーバが厳選して提携しているライターに、クラウド上でマッチングさせ依頼できるツールです。ライターが執筆した記事が、どれくらいのPVを獲得し、コンバージョンなどの目標に貢献したかが分かる機能があり、その貢献度に応じてライターへの報酬を決めることができます。

さらに、Cloud CMOの機能強化についても発表。これまでのコンテンツマーケティングを主体とした機能にとどまらず、獲得したリード育成のためのナーチャリングを実施するマーケティングオートメーションとしての機能を充実させていくと説明しました。

記者会見の第二部では、イノーバのマーケティング部リーダーである豊倉氏が、Cloud CMOで今後追加される機能を紹介。元々あるCMSやフォーム作成機能、メール配信機能、SEOキーワード管理機能に、今後はネイティブ広告を配信するDMP、外部CRMとの連携、スコアリング機能などが順次追加されていくと説明しました。

株式会社イノーバ マーケティング部リーダー・豊倉 濃 氏。
マーケティングオートメーション機能の充実化でコンテンツマーケティングを加速させると説明

しっかりとシミュレーションされた記者会見。随所に工夫も

記者会見は午前10:30から開始され、約10社のプレスが参加していました。司会の方が開催の挨拶として今回の「事業戦略発表会」の主旨を説明。今後の事業の展開と提供サービスの強化などのアウトラインを手短に話し、すぐに第一部が始まりました。

なお発表は最後までマイクを使っていませんでした。広い会場ではなかったため、後ろに座っていても十分に聞こえました。
また、参加者の手元には資料と飲み物、同社のロゴ入りのノベルティ(ノート)が配布されていました。

配布された資料とノベルティ。モレスキン風のノートで、こだわりが感じられる。

発表のスライドも公的な調査資料を交え、図版を豊富に使用したもので、非常に分かりやすく、特に第二部の豊倉氏の説明時は、スライド内に動画が活用されていたため、今後追加されていく機能がどのように動くのか、具体的なイメージを持つことができました。

発表は予定されていた時間を超過することなく終了し、その後の質疑応答でもプレスによる積極的な質問が多く、会見終了後も個別に質問をするプレスが多かったのも印象的でした。


担当者への質問。BtoB企業にもマーケティング施策として可能性のある記者会見

堅苦しくなく、どこかアットホームに思えた今回の記者会見でしたが、担当者に伺ったところ記者会見をアテンドするような会社に依頼せずに、独自に設計してメディアリレーションをしたとのこと。その方法について、ヒアリングしました。

―― 記者会見をしようと思ったきっかけは?

回答:他社では戦略を発表するような記者会見を広報が主体に実施していました。マーケティングにもメディアリレーションの重要性を感じていて、今回の発表をするに至りました。

より信頼を得られる会社になるためには、内容を継続的に公開して、成長しているということを社外に公表すると同時に、社内にも意識づけさせる必要性を感じています。また某PR会社の方からの「ブリーフィング(報道機関などに実施する説明)はやってみると得るものが大きいですよ」というアドバイスも今回の記者会見開催の後押しにもなりました。

イノーバは社会的には「コンテンツ制作の会社」というイメージがあります。今後は事業を多角的に展開していくために「自社開発のマーケティングオートメーションツールとコンテンツマーケティングで、企業のマーケティングを支援していく会社」にアップデートする必要性があると考えています。

記者会見終了後も個別にプレスから質問を受け対応する。

―― 実際に記者会見をした結果は?

回答:やはり直接対話の場を設けられるメリットを感じました。その場で質問を受けたり撮影されたり、その内容が記事になって社会に拡散されていく効果は、インタビューされることよりも大きかったと思います。その記事を見た別の会社のプレスの方からの取材依頼も増えました。また、ブリーフィング用にプレゼンの用意をするため、自分たちの頭が整理されます。

―― 記者会見の日時を決めたのはいつくらいでしたか? またメディアの集め方は?

回答:日取りを決めたのは、7月末から8月の上旬でした。
案内状を作成し、まずは自分自身で連絡の取れるプレスの方へメール送信し、個別に電話もしました。まだ関係ができていないメディアへは窓口にメールを送信しましたね。付き合いのあるそのメディアの関係者にフォローも依頼しました。

―― 多めに声をかけた? 来てくれそうなメディアにだけ声をかけた?

回答:多めに声をかけました。もちろん急な予定で当日にキャンセルの連絡のあったメディアもありましたが、想像以上の数のプレスの方々に来ていただいたと感謝しています。


やってみないことには、その効果も図れない。まずはメディアに連絡を

ハードルの高そうな記者会見ですが、まずはメディアにコンタクトできるかどうかがカギになります。身近にプレスの方がいない場合は、メディアの窓口に連絡してみることから始めてみてはいかがでしょうか。メディアの興味を引きそうな、まさに「コンテンツ」を用意できれば、記者会見を開催することは容易なはずです。

最後に今回の記者会見で記事になった一部と、イノーバのプレスリリース内容をご紹介いたします。