業界別BtoB企業サイト分析:福利厚生代行サービス編

Webサイト事例, ブログ

Webサイトの運用を担当していると、気になるのは他の業界や競合他社がどのような取り組みをしているのかではないでしょうか。今回は「福利厚生代行サービス」業界にスポットを当て、各企業のWebサイトへの取組み姿勢、参考にしたいポイントなど、コンサルタントの目線でヒューリスティックに分析し、解説したいと思います。

「福利厚生代行サービス」に注目が集まる

働き方改革やワーク・ライフ・バランスに注目が集まる現在、企業が福利厚生を充実させるための手段として、福利厚生代行サービスは、非常に人気が高まっているようです。各社ともWebサイトの活用に力を入れており、とてもレベルの高いWebサイトがしのぎをけずる状況となっています。

今回は、導入社数(公表値)で上位の3サービス、「リロクラブ」「ベネフィット・ワン」「イーウェル」をピックアップし、各社のWebサイトの良い点、気になる点を分析しました。同業界のWeb担当者はもちろん、BtoB企業のWeb担当者が、サイトを効果的に活用するうえでの参考になれば幸いです。


リロクラブ

リロクラブ:導入社数9,300社(2017年4月現在)
https://www.reloclub.jp

● デザイン・構成

トップページの大きなキービジュアル上で、「人に元気を。企業に活力を。」という企業ミッションを打ち出すと同時に、導入企業数や第三者機関による顧客満足度調査といった実績の数々を大々的に紹介しています。これによって、「社会的な使命を持ち、信頼できる会社」というキャラクターを、初見で印象付けることに成功しているでしょう。

また、サイト全体のデザインにおいても、落ち着きのある青をキーカラ―に据え、やや大きめのフォントや、ゆとりのある余白を効果的に配することによって、キャラクターの属性にふさわしい、穏やかで健全な雰囲気を醸成しています。

● ユーザビリティ

もともとのサイト構成がシンプルなので、上部に設置されたグローバルナビゲーションで十分な回遊導線が担保されています。

なお、グローバルナビゲーションが固定されているので、上下スクロール中のどのタイミングでも、ストレスなく目的のコンテンツにアクセスできる工夫がされています。

また、レスポンシブデザインの採用とメニュー項目の少なさの相乗効果で、スマートフォンでアクセスした際もPCデバイス時に劣らぬユーザー体験を提供しています。

● エントリーフォーム

「お問い合わせフォーム」に関しては、極力他ページへの遷移導線を配するなど、基本的なEFO(エントリーフォーム最適化)がきちんと実施されていることが確認できます。

一方、「商談依頼用のフォーム」に関しては、昨今、普及が進んでいる「オンライン商談」システムを導入しています。はじめて「オンライン商談」システムを使う人にもわかりやすいよう、図版付きの丁寧なガイドを掲載している点も、EFOの観点か評価できます。

● コンテンツ

メインのサービスの紹介ページに加え、「よくある質問」や、「お客様の声」、「ブログ」といった、コンバージョン率を高めるための補助コンテンツも一通り用意されています。なお、「お客様の声」に関しては、「私たちの宝物」という名称のコンテンツで、クライアントではなく、その先にあるエンドユーザーの声(感想)を取り上げています。この切り口は、企業で働く社員、その家族の幸せ向上を目的とした、福利厚生代行サービスならではで、非常に新鮮な発見となりました。

● 総評

福利厚生代行サービスのリーディングカンパニーという立場ならではの、余裕のある構成と高品質なデザインによって、快適にサイトを回遊し、効率的に情報を収集できます。コンバージョンへの意欲を高めるための補助コンテンツも網羅され、最終ゴールであるエントリーフォームも、一定水準のユーザビリティが担保されています。全体的に完成度が高く、リード獲得を目的としたBtoB企業サイトとして、非常にレベルの高い仕上がりとなっています。


ベネフィット・ワン

ベネフィット・ワン:導入社数7,170社(2017年4月現在)
https://bs.benefit-one.co.jp/bs-official/index.html

● デザイン・構成

会員サービスサイトである「ベネフィット・ステーション」を会員以外でも検索・閲覧できるようにしていることから、プラットフォームが同社の強みの1つであると推察されます。それをWebサイト戦略に落とし込んでいるためか、直線基調のフラットデザインを採用し、白背景&赤いキーカラ―による強烈なコントラスト、小さめのフォント等によって、先進性とテクノロジー性というキャラクターが付与されています。

なお、白背景&赤いキーカラ―によるコントラストは、訴求においても効果的な作用を生み出しています。

● ユーザビリティ

デザイン性を重視しているためか、グローバルナビゲーションのフォントサイズが小さくなっています。やや視認性が低い印象ですが、メニュー項目も少なくシンプルな構成なので、回遊性にはそれほど影響はないと思われます。

ただし、「企業ブログ」というメニューの遷移先が外部のメディアとなっており、既存のウィンドウで遷移してしまうことと、遷移後に元サイトへの明確な導線が確保されていないことから、不便を感じてしまう可能性があります。ページ内の視認性、操作性については、色数や情報量が抑えられていることから、非常に良好であるといえます。

● エントリーフォーム

新規入会用フォームに関しては、「入会の手引き」という、導入までのステップを丁寧に紹介しているページを一度経由する仕組みになっています。ページ遷移が増えることで離脱リスクが高まる可能性がありますが、ユーザー本位の親切な設計だと評価できます。

フォーム自体もEFO(エントリーフォーム最適化)が徹底されており、申し込みにあたってのハードルをほとんど感じさせない設計となっています。一方、問い合わせフォームに関しては、視認性や導線設計といったユーザビリティ面で課題を感じます。

また、リロクラブ同様に「オンライン商談」システムを導入しているものの、フォームへ到達するまでこの存在に気づけないというのはもったいない気がします。

● コンテンツ

料金早見表や充実した内容のFAQ集、ダウンロード資料など、コンバージョン意欲を高めるための補助コンテンツはしっかりと網羅されている印象です。

また、企業ブログとして「BOWGL」というメディを運営しており、良質なコンテンツを高頻度で掲載しています。ここでは、福利厚生にまつわる直接的なトピックだけでなく、課題軸をテーマとした記事も多く、潜在顧客の発掘とその動機付けに一役買っているでしょう。

● 総評

性質的には、クラウドサービス系のWebサイトに近いデザイン、構成なので、合理的で無機質な印象を受けますが、他社との差別化・強みである会員向けプラットフォーム「ベネフィット・ステーション」の訴求という点では、理に適っています。

同社の場合、会員以外にも公開されている「ベネフィット・ステーション」や情報発信メディア「BOWGL」など、幅広いチャネルから集客できることが1つの強みであると思われます。


イーウェル

イーウェル 導入社数1,200社(2017年4月現在)
https://www.ewel.co.jp/

● デザイン・構成

濃紺をキーカラ―とした堅めの配色や、オーソドックスな構成要素、スーツ姿のキービジュアルなどから、いかにも法人向けのWebサイトという印象を強く受けます。派手さはありませんが、画像の選定から細部のパーツまで、デザインの完成度は高く、「誠実でしっかりした会社」というキャラクターが付与されています。

また、同サイトでは、各サービス紹介ページがランディングページのような構成となっており、サービス紹介から導入事例、フォームに至るまで、すべて同一ページ内にまとめられています。ページボリュームが少ないので、SEOでは不利になる可能性がありますが、サイト全体を俯瞰しながらの回遊が容易となり、クロスセルの推進が期待できます。

● ユーザビリティ

サイト全体のページボリュームが少ないため、シンプルなグローバルナビゲーションで一定の回遊性が確保されています。また、メニュー項目を担当者軸で分類するなど、よりユーザー目線での明快な導線を実現するべく工夫がみられます。

一方で、ページ内の移動に関しては、下に長いページが多い割に、上下間を快適に移動するため機能がなく、ユーザビリティに改善の余地がありそうです。特に、スマートフォン画面ではよりページが長くなるので、固定式のスクロール制御ボタンを用意するだけでも、快適性が向上すると思います。

● エントリーフォーム

サービス紹介ページの下部にエントリーフォームを直接展開することで、訪問者のモチベーションが高い状態のまま、入力を促せるというメリットがあります。

ただし、「サービスページに到達するまで、問い合わせの存在を訪問者が認識できない」「トップページや会社概要ページから、ダイレクトに問い合わせができない」といった、回遊性の面でユーザビリティに課題がありそうです。また、フォーム自体も、文字の視認性やデザイン品質の面で改善の余地があるでしょう。

● コンテンツ

サービス紹介ページにおいては、導入実績やお客様の声などの補助コンテンツを散りばめ、ソツのない内容にまとまっているものの、啓蒙的な切り口と単調な構成によって、やや訴求力に欠ける印象を受けます。

また、更新型コンテンツである「イーウェル総合研究所」は、無料セミナーの案内や専門家によるコラム掲載、ホワイトペーパーなど、非常に有用な情報を網羅的に提供しています。現状では、ページ下部のバナーによる、消極的な案内となっているようですが、当コンテンツをより積極的にアピールしていくべきだと思います。

● 総評

トップページから各サービス紹介ページに至るまで、徹底して課題軸での切り口を主体とした構成となっています。啓蒙的なメッセージも随所にみられ、サイトを回遊して得られるユーザー体験としては、オーソリティによるセミナーを受けた後の感覚に近いものがあります。

課題感を強く持った見込み顧客ほど、まずは相談してみようという気になるのではないでしょうか。競合サイトとの明確な差別化を踏まえ、非常に巧みなWeb戦略であると思われます。


サイトの現状を正確に把握しましょう

以上、福利厚生代行サービス業界のWebサイトを客観的な視点で分析しました。

同じカテゴリーの商材を扱っているにも関わらず、各社それぞれ、Webサイトへの取り組み方、その方向性には大きな違いがあります。Webマーケティングにおいては、競合サイトのWeb戦略を見極め、自社サイトのポジショニングを正しく設定することが重要となります。

MARKEiTでは今、BtoB企業サイト専門のWebコンサルタントによる「Webサイトパフォーマンス診断」を無料で実施しています。自社サイトを客観的に評価、分析する機会はなかなか得られません。「訪問数が伸び悩んでいる」「コンバージョン率が低い」「リニューアルを検討している」といったWebサイト担当者は、まずは自社サイトの現状を正確に把握することをおススメします。


<著者プロフィール>
滝沢 哲平(たきざわ てっぺい)
2014年2月入社。 前職で法人向け(BtoB)のWebサイトを構築・成長させてきた経験を活かし、BtoBクライアントのWebサイト改善・運用コンサルティングに従事。 アクセス解析による定量的な分析と、経験則に基づいたヒューリスティック分析の両輪で、数多くのBtoBクライアントのビジネス成果向上(リード獲得)にコミット。