24時間365日体制で、ソーシャルメディア上の投稿監視サービスを提供するアディッシュ株式会社。同社のソーシャルメディア運用のスペシャリストである藤澤氏へ、BtoB企業におけるソーシャルメディアマーケティング活用のリスクとメリットを伺いました。
【目次】
- プロフィール
- ソーシャルメディアはブランディング活用?
- BtoB企業のソーシャルメディア活用における炎上リスクの可能性
- 良い情報を配信し続けることが、炎上リスクにも勝る ソーシャルメディアの積極活用のススメ
プロフィール
藤澤 寿文氏
アディッシュ株式会社
オンラインコミュニティ事業部ポリシーアーキテクト
兼 社長室 室長
Yahoo株式会社、株式会社アイスタイルでのアットコスメ運営責任者を経て2008年ガイアックスへ入社。その後、投稿監視、ソーシャルリスニングなどのソーシャルメディアでのコミュニケーション課題に対する問題解決を支援するアディッシュ株式会社へ転籍。 現在はBtoC企業を中心にサイト運営ポリシー策定の責任者を担う。
インタビュアー
株式会社ガイアックス ビジネスマーケティング事業部 事業部長 中村 竜次郎
同 MARKEiTブログ編集員 柏木 美里
ソーシャルメディアはブランディング活用?
柏木:藤澤さんが現在携わっている業務について、まずはお聞かせください。
藤澤氏:アディッシュはソーシャルメディアやコミュニティサイト、Webサイト等の投稿監視や運営代行の他に、ソーシャル上の投稿において、クライアントがどのように話題になっているかを分析するソーシャルリスニングを提供しています。その中で私はポリシー設計、具体的には消費者のどのような声を拾い上げ、分析し、自社サービスへの活用方法を検討しています。

柏木:BtoB企業もBtoC企業のようにマーケティングにソーシャルリスニングを活用しているのですか。
藤澤氏:BtoB企業では、マーケティングというよりも、ブランディングを気にされる方が多いですね。「悪い評判を起こすことによって、取引先に切られてしまうのではないか」「上場準備をしているときに悪い評判が立たないか」などです。
BtoB企業のソーシャルメディア活用における炎上リスクの可能性
中村:ブランディングや広報ではなくて、BtoBのプロダクトやサービスに関して、ソーシャルメディア上で炎上するリスクはあるのでしょうか。
藤澤氏:通常、ほとんどないですね。BtoB企業がソーシャルメディア上で炎上するのは2つのケースです。
1つはそのサービスに関して投稿した人が著名な場合です。
その投稿を見た人自身はよく分からない内容でも、「あの有名な人がわざわざソーシャルメディアやブログで取り上げているのだから、何か問題があるのだろう」と認識し、炎上につながることがあります。
もう1つが一般の人に分かりやすいケースです。これは企業やサービスが法的にブラックで、事件性があるパターンですね。
元々がブラックな体質であるとか、会社として黒いと思われているところはより炎上しやすいです。1つの事象から、その他の事象も問題があることが発覚し、誘爆することもあります。

柏木:企業やサービスに問題がなければ、炎上することはあまり考えられないとは少し意外でした。
藤澤氏:BtoBは特に、もともとのサービスに瑕疵があると炎上の可能性が高まります。例えば、給与計算ASPを提供している企業が、数万人の個人情報を漏らしてしまったら大炎上になるでしょう。けれど、それは「ソーシャルメディアが」というよりも、実際の事象に対しての炎上です。
ソーシャルメディア発端での炎上となると、「とんでもない働かせ方をする」という告発か、もしくは「従業員が何かを起こしてしまった」かのどちらかです。そうなると一般的な企業に求められるコーポレートガバナンスの問題となります。
中村:では、もしも炎上してしまった場合は、どうすればいいのでしょうか。
藤澤氏:誠実に対処することです。例えば、「従業員が何かを起こしてしまった」という場合は、事実関係を確認したうえで、それなりの処分を行い、それを発表するなどします。もちろん公式発表をするかどうかは、事の重大さにもよりますが。
柏木:最近、BtoB企業もFacebookで広告を出稿するようになってきました。Facebookの広告で炎上する可能性はあるのでしょうか。
藤澤氏:よっぽどひどい内容でなければ、炎上はしないと思います。邪魔だと思われて、非表示ボタンを押されるくらいでしょう。しかし、そうなるとそのユーザーへはアプローチはもちろん、そのユーザーから先へもアプローチができなくなり、広告の意味がなくなってしまいます。当たり前のことですがFacebook広告では、閲覧者に好まれる出稿をするべきです。
良い情報を配信し続けることが、炎上リスクにも勝る ソーシャルメディアの積極活用のススメ
柏木:BtoBでは、リスクを考えて、ソーシャルメディアの活用を躊躇する企業が多いのですが、やはり積極的に使っていくべきでしょうか。
藤澤氏:何に使うのかという目的設定が重要です。BtoB企業の場合、一般の方に認知を広げるだけでは意味がありません。もちろん一般の方の中に将来の取引先となる決裁者がいるでしょう。そのため「幅広い層のターゲットを攻めて、その中にわずかにいるであろうターゲットを拾っていく」のか、それとも「もっとピンポイントに特定業界だけに露出をしてファンを増やす」のかなど戦略を立案していく必要があります。

柏木:そうなると、比較的ソーシャルメディアを使っているであろう情報通信系の企業ほど、より活用するべきなのでしょうか。
藤澤氏:有益な情報を発信し続けられれば、業界問わず、興味がある人がフォローしてくれます。フォロワーが増えれば、それ自体がメディアになっていきます。
例えば、興味のない人にいくら広告を打ったとしても大きな効果は期待できません。広告で数百万円使ってアプローチしたとしても、その中にターゲット企業の決裁者が3人程度だったらどうでしょう。
ソーシャルメディアの特性は「情報が人を介して拡散する」点にあります。例えば、趣味で山登りをしている人が情報を拡散していれば、同様に山登りを趣味にしている人が情報を見て、更なる拡散へと繋がるわけです。類は友を呼ぶと言いますが、ターゲットにアプローチできれば、そこからの拡散で、その周りのターゲットたちにもアプローチできる可能性が高いです。そのため、”こういう情報を発信する場所だ”とジャンルや範囲を決めることで、見込み顧客にアプローチしやすいわけです。
ソーシャルメディアに限らず、オウンドメディアと呼ばれるブログやWebサイトでも同じことです。最近はコンテンツマーケティングとよばれて、情報発信の大切さが認識されてきました。
しかしながら、オウンドメディアだけで情報発信をするだけでは、認知されるのに非常に時間がかかります。発信した情報をどれだけ認知してもらえるのかが、コンテンツマーケティングには重要です。つまり、オウンドメディアもソーシャルメディアの活用があって生きるものです。ソーシャルメディアもオウンドメディアも同じレベル感で考えていったほうが、可能性は広がるのでしょうね。
中村:ソーシャルメディアは炎上リスクを回避して手を出さないよりも、積極的に使っていったほうが良いということですね。
最後にBtoB企業のマーケティング担当者へのメッセージをお聞かせいただけますか。
藤澤氏:ソーシャルメディアはマーケティングでの活用に可能性が高いものではありますが、一方
で、社員が個々で使用する面も覚えておく必要があります。BtoB、BtoC関わらず、ソーシャルメディアに関して、企業が何らかのポリシーを持ち、従業員のリテラシーを上げることが必要です。
何かあったときだけ、ピンポイントで対処するのではなく、業務で活用する場合も、従業員が個々で使用する場合も、日頃からプラスになるような使い方ができる環境を作っていくことが大切です。
そして、積極的にソーシャルメディアを活用出来る企業として、マーケティングの効果を高めていってください。
中村・柏木:本日はお忙しい中、ありがとうございました。
最後は3人でパシャリ。藤澤様、貴重なお話しをありがとうございました!